1.アジャイルの概要

アジャイルの概要 #

flowchart TD A[かんばん方式 1960代] -->B(「トヨタ生産方式」 1978年、大野耐一) B --> C(「The New Product Development Game」 1986年、野中郁次郎、竹内助教授) C -->D(「スクラム」) D -->E(「アジャイルソフトウェア開発宣言」 2001年)

世界のソフトウェア開発の手本となっている「かんばん方式」 #

まずトヨタの生産方式を確立させたのが、1960代にトヨタが採用したかんばん方式だといわれています。

かんばん方式においては、最初から無駄が生まれない仕組みになっているので、常に人が存在せずともかんばんにより最適化が図られていることになります。

この過程でトヨタの生産に関する理論の体系化に多大な貢献をされたのが大野耐一さんというトヨタの元副社長の方で、1978年に「トヨタ生産方式」という名著を記されています。これは10年後の1988年に英語版でも出版され、世界中で読まれています。

日本組織から生まれた「アジャイル開発」と「スクラム」の原点 #

より広く世界が日本型組織を注目するようになった転機の一つとして、1986年に一橋大学教授の野中郁次郎教授と、ハーバード大学の竹内助教授が発表された「The New Product Development Game」という論文の存在があります。

この論文では、日本の組織のオペレーション面だけに着目するのではなく、小さなチーム単位で自律的に学び、仕事にあたる形態を「スクラム」と表現しました。組織内のチーム連携が優れている点に着目し「学びを最大化させる」発想が組織に根付いていることを説明しました。

「アジャイルソフトウェア開発宣言」の原点 #

この論文に着目したのが、Jeff Sutherland、John Scumniotales、Jeff McKennaといった米国のエンジニア経験者を中心としたメンバーで1990年代に10年ほどかけてこのハードウェアの生産におけるアジャイル開発の考え方を、ソフトウェア開発の分野にも応用できないかという研究が進められました。

なぜこの研究を進めていたかというと当時、要件定義を最初の段階で固定化させてしまい建築物のような手法を応用してプロジェクト単位で管理していくウォーターフォールが主流で、その手法だけでは柔軟性に欠け、システム開発が常に長期化し、かつ無駄に肥大化してしまう傾向にあり、大きな問題となっていました。そこで2001年の従来のソフトウェア開発とは大きく異なる手法を提案したあの有名な「アジャイルソフトウェア開発宣言」に繋がっていくわけです。